山下晴代の「積ん読亭日常」

まっとうな本を読んでいく。

#詩

【詩】「Metaphor」

「Metaphor」 denotationconnotationcognitive linguisticstarget domainsource domainをりかく神無月しぐれの雨をたてぬきにしてわれわれはどんなオレンジ色をよみ人の性別さへしらず

【詩】「リルケに捧ぐ」

「リルケに捧ぐ」 主に捧げる秋の詩の 錆色の葡萄傷心だけが私の唯一の収穫 宇宙の果てに消えた父を探して 出かけねばならないどうやって? 宇宙飛行士としての訓練もしてなくて 宇宙服もなくNASAにも登録してなくて ナンタケットだけは覚えている捕鯨の…

【詩】「仮死の秋」

「仮死の秋」 「……何より顕著なのは、『知の考古学』から厳しく身を引き離そうとしている仕草である」(蓮實重彥著『批評あるいは仮死の祭典』せりか書房、1974年刊より) 20年前は、蓮實重彥と橋本治を愛読し、「ふたりのハ」と呼んでいた。あれから20年以…

【詩】「不可能」

「不可能」 ヴァレリーの十行詩 ababccdeed と脚韻を踏む『蛇の粗描』 ?bauche d'un serpent を日本語に訳すはいいが同様な韻を踏むことは不可能であるこの蛇は vip?re マムシである 十行詩とは十行の節が一連を形成している詩で、ababccdeed と韻を踏むヴァ…

【詩】「詩法」

「詩法」 ヴァレリーのいない遠州では蛇も 粗描されない詩法の数に戸惑うばかりだ だがそれは当然だった記憶のために詩が 必要だった韻文は筆記と同等で 残る 鏡の中に見るは遠州の祖母の眼 オオサという食料品店の娘だった そうな山奥の食料品店すなわち い…

【詩】「はげ鷹」

「はげ鷹」 吉田健一はたったひとつの地名でも 詩になると言った 私にとって遠州というのが詩である それはその名のとおり遠く 州であるその谷の砂地には いつでもはげ鷹の死骸があって 陽に照りつけられて匂う それは私にとって父性であり 父性とは最初に子…

【詩】「アテネ」

「アテネ」 おとうさま、あなたが病に対してパロールを拒んだ時から、死すべき者たちは苦しまねばならなくなりました。 わたくしは、そのものたちのエスを癒すため、ニューヨークという大都会で、春をひさぐ仕事を始めました。 アテネ、ゼウスの娘。 ゼウス…

【詩】「惑星の名前できみを呼ぼう」

「惑星の名前できみを呼ぼう」 今では 雨が降っても 簑を着るひとはいない。 湿った藁の感触を 思い出すひとはいない。 宇宙最速の 光さえも出られない 穴 かすかに きみの寝息が聞こえる きみの出自 きみの記憶 きみの知識 きみの教養 のなかに、 湿った藁…

【詩】「カラスが蝉を喰っている」

「カラスが蝉を喰っている」 マンションの庭の林立する木立に、蝉が鳴き始めて久しい。じーじーじーと途切れなく続いているのだが、それが「ジジッ」と途切れるときがある。一度見たことがあるが、カラスが蝉を、パクッとやっているのである。蝉は喰われる寸…

【詩】「サイコキラー、Qu'est-ce que c'est? 」

「サイコキラー、Qu'est-ce que c'est? 」 期待していたものに あざむかれて 世界は裏返り 宇宙を見失うとき ひとは、詩を書こうと 思いつく。 サイコキラー、Qu'est ce que c'est? ことばが人と共通と知ったとき 裏切ってみたい感情が発明される サイコキラ…

【詩】「地獄でのひと季節」

「地獄でのひと季節」 Jadis, si je me souviens bien, ma vie ?tait un festin o? s'ouvraient tous les c?urs, o? tous les vins coulaient. かつて、もしぼくの記憶が確かなら、ぼくの生活は心という心が開かれ、葡萄酒という葡萄酒が流れ出る饗宴だった…

【詩】「Fahrenheit 451、あるいは、突然トリュフォーのごとく」

「Fahrenheit 451、あるいは、突然トリュフォーのごとく」 まるで驟雨のように 駆け去っていく 雨の予報 天は一滴の雨も恵むつもりはないようだ Fahrenheit 451 つまり摂氏約233度まで 待たなければ 紙は燃えない 渇いているのは 愛 何への? ひと? 本? 記…

【詩】「Char、そして雨」

「Char、そして雨」 Hypnos saisit l'hiver et le v?tit de granit. L'hiver se fit sommeil et Hypnos devint feu. La suite appartient aux hommes.* ヒュプノスは冬を捕まえ冷たい花崗岩の服を着せた。 冬は眠くなりヒュプノスは火になった。そして彼らは…

【詩】「花びらとしての物語」

「花びらとしての物語」 クロード・シモン『アカシア』のページを開けば、T.S.エリオットの『四つの四重奏曲』からの詩篇が引いてある、 現在も過去も未来のなかに現前し、 未来は過去のなかに含まれるという意味の行 そして目次は、12章をローマ数字で示し…

【詩】「フーコー最後の問い」

「フーコー最後の問い」 1984年に死んだ、ミシェル・フーコーが 1982年10月にアメリカのヴァーモント州のヴァーリントンに3週間滞在し ヴァーモント大学でテーマを掲げ、学生や教授たちと研究を共有した、そのテーマに関する講義が、彼の、まさに人生におけ…

【詩】「重力/虹」

「重力/虹」 もののとらえ方は外部から だけでなく内部から もあることは ベルクソンが長い間 研究して示した たいていのひとは外部だけを 描写する。それを 存在だと信じる 闇のなかをゆく 列車 ずっと高いところにガラスの 天井があって いまにも 崩れそう…

【詩】「死んでいくあなたへ」

「死んでいくあなたへ」 たぶん、あなたは、 死んでいく。十分に理解し合えたとはいえず、十分に楽しい時を過ごしたとはいえず、見つめあって微笑み合い、満足した数も記憶からは消え去り、ぬくもりさえも 伝わらず、声だけが 陰気な響きで、耳の奥に残って…

【夢】「夢に溺れて」

「夢に溺れて」 夢に溺れていた。 夢はどんな物質でできてきるのだろう? 水ではなさそうだ。 物質ではなく、精神のようなもの? すべては脳内で起こっていたこと? 息苦しいほど孤独で すべての知識は無効で 自分であることが不幸で 母だけが癒せる 母を求…

【詩】「石原慎太郎『太陽の季節』」

「石原慎太郎『太陽の季節』」 江ノ島が見えてき~た、オレの家も近い(クワタケースケ、オオトリケースケとは違うヒトです) 江ノ島とか 鎌倉とか ヨットとか ギターとか 加山雄三とか アデランスとか 加瀬邦彦とか そーゆー お坊ちゃま文化があり、 地方の…

【詩】「ユリシーズ」

「ユリシーズ」 ああ、また、ユリシーズの日がやってくる。堂々とした押し出しの、バック・マリガンが、ガウンをなびかせて、彼らの下宿である塔の螺旋階段を下りてくる。朝のマイルド・ウィンドが、ふんわりと、ガウンの裾を持ち上げる。マリガンは、片手に…

【詩】「プルーストの記憶」

「プルーストの記憶」 ひえだのあれの『古事記』、あるいは、ホメロスの『イリアス』、『オデュッセイア』、あるいは、ボルヘスの「不死の人」 ではないが、プルーストの 『失われた時を求めて』を全文、もちろん仏語で、 暗記しようと思っている。その甘い…

【詩】「それをお金で買いますか?」

「それをお金買いますか?」 いちご 麦わら帽子 天使 思い出 記憶 命 詩集の装丁 賞 賞讃 友情 憎しみ 花壇 苔 鮎 りんご Twitterのフォロワー SNSのフォロワー 信用 つけまつげ 芸能界デビュー 社交界デビュー 政権 石鹸 神 死 空海 真言宗 留学 僧の留学 …

【詩】「2001年宇宙の旅」

「2001年宇宙の旅」 ヨハン・シュトラウス2世が1867年に作曲した『美しき青きドナウ』の進行にそって、宇宙船がゆく。この曲を聴けば誰もがこの映画を思い出し、思い出せない人はご愁傷様。宇宙、未来。水飲み場を争って、「殺人」(?)まで犯してしまった…

【詩】「やまと魂」

「やまと魂」 犬の散歩で通り抜ける護国神社は、 数十万柱(神の単位呼称は「柱」である)の「英霊」が祀ってあると、鳥居横の石碑に刻まれ、広大な敷地では、蚤の市や音楽祭が開かれる。ときに、黒塗りのセダンや看板をつけたトラックが並び、黒づくめの男…

【詩】「フーコー v.s. 吉本隆明」

「フーコー v.s. 吉本隆明」 1978年4月25日、来日したミシェル・フーコーと吉本隆明が対談した。その模様は、吉本の『世界認識の方法』(中央公論社)という本に収録されている。通訳は、蓮實重彥。 フーコー「不幸にして吉本さんの著作は、まだフランス語に…

【訳詩】(サミュエル・ベケットがフランス語で書いた)「1 POEMES 1937-1939」より

【訳詩】(サミュエル・ベケットがフランス語で書いた)「1 POEMES 1937-1939」より elles viennent autres et pareilles avec chacune c'est autre et c'est pareil avec chacune l'absence d'amour est autre avec chacune l'absence d'amour est pareille…

【詩】「Je ne sais pas」

「Je ne sais pas」 ミシェル・フーコーが、カント資料館の館長としてジュネーブだったかに飛ぶ際、遺言状を書いた。生前開けるべからず。死して、その遺言状を開けたら、 わが著作すべて破棄すべし。 わわわ……こまったなー……周囲の人々。 つまり、それは、 …

【詩】「タイタニック、あるいは、撃沈」

「タイタニック、あるいは、撃沈」 もー、何年前かしらー? あ、そっか、ディカプリオが出てたのか、その映画にね。あれから、ディカプー(通称レオ)は、何作映画に出たかわからない。大スターだけど、無冠の帝王。出世作は、『ギルバート・グレイプ』。彼…

【詩】「あら野、あるいは、Cry me a river」

「あら野、あるいは、Cry me a river」 雲雀たつあら野におふる姫ゆりのなににつくともなき心かな サッと飛びたった雲雀は、 イタリアの茂みに棲むウンガレッティ雲雀か、それとも、アフリカの森に憩う、ウンガレッティ親友雲雀か、こちら元禄ニッポンの、 …

【詩】「影」

「影」 Or puoi la quantitate comprender dell'amor ch'a te mi scalda, quand'io dismento nostra vantate trattando l'ombre come cosa salda. T.S.エリオットの詩集『プルフロックとその他の観察』の冒頭に、上の語句が引用されている。水死した男の恋人…