山下晴代の「積ん読亭日常」

まっとうな本を読んでいく。

文学

【詩】「リルケに捧ぐ」

「リルケに捧ぐ」 主に捧げる秋の詩の 錆色の葡萄傷心だけが私の唯一の収穫 宇宙の果てに消えた父を探して 出かけねばならないどうやって? 宇宙飛行士としての訓練もしてなくて 宇宙服もなくNASAにも登録してなくて ナンタケットだけは覚えている捕鯨の…

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド 』──落ち目なのはタランティーノ(笑)(★★★★)

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド 』(クエンティン・タランティーノ 監督、2019年、原題『ONCE UPON A TIME IN HOLLYWOOD』) 歴史=事実というものは変えてはいけないのである。そういうことが許されれば、ホロコーストはなかったという筋…

【詩】「仮死の秋」

「仮死の秋」 「……何より顕著なのは、『知の考古学』から厳しく身を引き離そうとしている仕草である」(蓮實重彥著『批評あるいは仮死の祭典』せりか書房、1974年刊より) 20年前は、蓮實重彥と橋本治を愛読し、「ふたりのハ」と呼んでいた。あれから20年以…

【詩】「記憶」

「記憶」 記憶の中の豊橋駅は、 脳の右側でしか再現されずそれは 古代都市のような階段を持ち床はいつも 水で濡れている 階段の右側はガラスのウィンドウがあってそこに 人形が縦横に置かれて 上っていく者を見つめている 痰ツボをはじめて知った さらに右へ…

【詩】「不可能」

「不可能」 ヴァレリーの十行詩 ababccdeed と脚韻を踏む『蛇の粗描』 ?bauche d'un serpent を日本語に訳すはいいが同様な韻を踏むことは不可能であるこの蛇は vip?re マムシである 十行詩とは十行の節が一連を形成している詩で、ababccdeed と韻を踏むヴァ…

【詩】「詩法」

「詩法」 ヴァレリーのいない遠州では蛇も 粗描されない詩法の数に戸惑うばかりだ だがそれは当然だった記憶のために詩が 必要だった韻文は筆記と同等で 残る 鏡の中に見るは遠州の祖母の眼 オオサという食料品店の娘だった そうな山奥の食料品店すなわち い…

『ロケットマン 』──タロン・エガートンの軽さが作品を脱物語化(★★★★★)

『ロケットマン』(デクスター・フレッチャー、2019年、原題『ROCKETMAN』) すでに若手俳優界も様変わりして、容姿がすぐれた人間などどこにでも落ちているので、まず演技力がなければオハナシにならない。かてて加えて、オリジナリティー、現代の軽さも身…

【詩】「はげ鷹」

「はげ鷹」 吉田健一はたったひとつの地名でも 詩になると言った 私にとって遠州というのが詩である それはその名のとおり遠く 州であるその谷の砂地には いつでもはげ鷹の死骸があって 陽に照りつけられて匂う それは私にとって父性であり 父性とは最初に子…

ブログのおまとめ

いろいろ開設してますが、こちら↓におまとめ……といっても、まだ「あって」ますが。ブログ界のロングテール、一強、そういう時代なのかも。 https://ameblo.jp/kumogakure39/

【詩】「アテネ」

「アテネ」 おとうさま、あなたが病に対してパロールを拒んだ時から、死すべき者たちは苦しまねばならなくなりました。 わたくしは、そのものたちのエスを癒すため、ニューヨークという大都会で、春をひさぐ仕事を始めました。 アテネ、ゼウスの娘。 ゼウス…

【アート】「クリムト展_ウィーンと日本1900@豊田市美術館」(2019/8/16)

「クリムト展_ウィーンと日本1900@豊田市美術館」 グスタフ・クリムトの生涯と、家族、友人などの、作品と写真、グッズで構成された、クリムトのすべてといっていい展覧会。 工芸学校で修行したクリムトは、絵の道具を扱う手法は確かであり、装飾から出発…

【詩】「惑星の名前できみを呼ぼう」

「惑星の名前できみを呼ぼう」 今では 雨が降っても 簑を着るひとはいない。 湿った藁の感触を 思い出すひとはいない。 宇宙最速の 光さえも出られない 穴 かすかに きみの寝息が聞こえる きみの出自 きみの記憶 きみの知識 きみの教養 のなかに、 湿った藁…

【詩】「カラスが蝉を喰っている」

「カラスが蝉を喰っている」 マンションの庭の林立する木立に、蝉が鳴き始めて久しい。じーじーじーと途切れなく続いているのだが、それが「ジジッ」と途切れるときがある。一度見たことがあるが、カラスが蝉を、パクッとやっているのである。蝉は喰われる寸…

今日の引用

【今日の引用】 「人生観などというものも昨今ではイデオロギーの類に堕しているのであって、このイデオロギーはすでにその名に値する生など存在しないのに、その点について人を欺いているのである。」(テオドール・W・アドルノ『ミニマ・モラリア』三光長…

【エッセイ】「年々バカが増えていることを愁えるこの記念日」

「年々バカが増えていることを愁えるこの記念日」 どこかのバカが某有名人の文章の、「無断シェア」ではなく、「無断引用」をしていた。なんでも、広島原爆は、アメリカの戦争犯罪だとか。この文章には、戦争犯罪なる言葉の意味をはき違え、かつ事実誤認もは…

【本】The Portable Hannah Arendt(Edited with an Introduction by Peter Baehr)Penguin Books 2000)

The Portable Hannah Arendt(Edited with an Introduction by Peter Baehr)Penguin Books 2000) 「ハンナ・アーレント・ハンドブック」 本書は2013年11月、ロンドン一大きな書店、Foylesで購入。この書店は、各本棚に書店員の手書きのレビューが付けられ…

【日本の短編を読む】高見順「或るリベラリスト」

【日本の短編を読む】高見順「或るリベラリスト」(『文藝春秋』昭和26年5月号)(四百字詰め約90枚) 蓮實重彥は『物語批判序説』で、物語=紋切り型を批判したが、それは物語のきれいな型に収まっているものを、小説とはしないという考え方だった。そして…

【詩】「サイコキラー、Qu'est-ce que c'est? 」

「サイコキラー、Qu'est-ce que c'est? 」 期待していたものに あざむかれて 世界は裏返り 宇宙を見失うとき ひとは、詩を書こうと 思いつく。 サイコキラー、Qu'est ce que c'est? ことばが人と共通と知ったとき 裏切ってみたい感情が発明される サイコキラ…

恥ずかしい人々

「恥ずかしい人々」 ネット上で、詩人、作家、学者、文化人として、文章を公にしている人々で、国会議員選挙で、しかも、戦争をするかもしれない党と党首が云々されている状況で、そんなことはまるで存在しないかのように、延々と私事、身辺雑記、花鳥風月、…

しかしながら、日本は政党政治なんで、

いつも通り、日本共産党に入れましたよ。埼玉で21年ぶりに議席獲得は、めでたい。

山葡萄色のプルースト

山葡萄色のプルースト、と、山葡萄色のらくがき。

山葡萄という名のインク

山葡萄という名のインク。

大濠公園のひまわり

福岡大濠公園で、ボランティア市民によって育てられているひまわり。

一等国、フランス

一等国、フランス。 「パリのパサージュの多くは、一八二二年以降の一五年間に作られた。パサージュが登場するための第一条件は織物取引の隆盛である。流行品店(マガザン・ド・ヌヴォテ)、つまり大量の在庫品を備えた初期の店舗が登場し始める。これは百貨…

【詩】「地獄でのひと季節」

「地獄でのひと季節」 Jadis, si je me souviens bien, ma vie ?tait un festin o? s'ouvraient tous les c?urs, o? tous les vins coulaient. かつて、もしぼくの記憶が確かなら、ぼくの生活は心という心が開かれ、葡萄酒という葡萄酒が流れ出る饗宴だった…

【詩】「Fahrenheit 451、あるいは、突然トリュフォーのごとく」

「Fahrenheit 451、あるいは、突然トリュフォーのごとく」 まるで驟雨のように 駆け去っていく 雨の予報 天は一滴の雨も恵むつもりはないようだ Fahrenheit 451 つまり摂氏約233度まで 待たなければ 紙は燃えない 渇いているのは 愛 何への? ひと? 本? 記…

【詩】「Char、そして雨」

「Char、そして雨」 Hypnos saisit l'hiver et le v?tit de granit. L'hiver se fit sommeil et Hypnos devint feu. La suite appartient aux hommes.* ヒュプノスは冬を捕まえ冷たい花崗岩の服を着せた。 冬は眠くなりヒュプノスは火になった。そして彼らは…

【詩】「花びらとしての物語」

「花びらとしての物語」 クロード・シモン『アカシア』のページを開けば、T.S.エリオットの『四つの四重奏曲』からの詩篇が引いてある、 現在も過去も未来のなかに現前し、 未来は過去のなかに含まれるという意味の行 そして目次は、12章をローマ数字で示し…

ハチミツの表示からクロード・シモン『アカシア』を思い出す。

ミシェル・フーコーの「新しいテーマ」は、「人間はなにでできているか」であった。「なにで」? とりあえず、ひとりの人間の内面は、その人間が収拾した「情報」と、彼が発信する「表現」、などでできている(当然、それだけではなく、それこそ、分析が必要…

【詩】「フーコー最後の問い」

「フーコー最後の問い」 1984年に死んだ、ミシェル・フーコーが 1982年10月にアメリカのヴァーモント州のヴァーリントンに3週間滞在し ヴァーモント大学でテーマを掲げ、学生や教授たちと研究を共有した、そのテーマに関する講義が、彼の、まさに人生におけ…