山下晴代の「積ん読亭日常」

まっとうな本を読んでいく。

【昔のレビューをもう一度】『あるいは裏切りという名の犬 』──「大ワル」フレンチオヤジ(★★★★★)


あるいは裏切りという名の犬 』(オリヴィエ・マルシャル監督、2004年、原題『36 QUAI DES ORFEVRES』)2007年2月5日 10時19分

 ダニエル・オートュイユ、ジェラール・ドュパルデューの二人の、「ちょいワル」イタリアオヤジなんて目じゃない、「大ワル」フレンチオヤジが、ライバル同士の刑事に扮し、火花を散らす、フランス・ハードボイルドもの。
 これが、ハリウッド映画なら、せいぜいが30代半ばの、美しい男を主役にするんでしょうが、ところがどっこいフランスは「おとなの国」ですから、こういう、50代も後半のオッサンたちが、どんどんぱちぱち、がんばるんです。
 このテの刑事モノにつきものの、裏切り、密告、暴力など、一応のメニューは詰まっているが、ハリウッド映画を見慣れた目には、なにか物足りない。それは、脚本のキレだったりするかもしれない。
 しかし、本作は、なにより、「フィルム・ノワール」なんである。なにより、その香りをあじわってほしい。それは、題名にも、よく現れている。『あるいは裏切りという名の犬』。なんて、かっこいいんでしょう。原題は、『36 quai des orfevres』。直訳すれば、『オルフェーブル河岸36番地』。「そのまんま」(笑)パリ警視庁の住所です。
 フランス人なら、「オートュイユ+デュパルデュー」両オッサンの刑事モノというだけで、邦題に見合う「香り」は感じ取っているんです。
 でも、日本人には、こういうかっこいい題名が必要なんです。
 ノワールな気分(?)に浸りたいヒトに。