山下晴代の「積ん読亭日常」

まっとうな本を読んでいく。

『ガールフレンド・エクスペリエンス』──セックスと金とネット

 確かにソダーバーグは、志の「高そうな」問題作をいろいろ作っている。『エリン・ブロコビッチ』はすきな作品だし、『トラフィック』もすばらしい。

 本作は、彼の、「ドキュメンタリー風タッチ」のデビュー作、『セックスと嘘とビデオテープ』を彷彿させる作品であるが、ど〜なんでせう? 時代は、2年ほど前、ちょうど、オバマとマッケインが、大統領を目指して戦っている時であるが、まだ「チェンジ」は明確になっていない、経済危機も決定的でない、そんな時期。あきらかに、『セックスと嘘……』の時代とは違っている。そういう違いがあるのに、「同じ手法」を使って、ほとんど、同工異曲とも思えるようなテーマの作品を作るのは、あるいは、ある種のいきずまりではないでしょうか?

 ネットを主に、「お店」に使った、「高級エスコート」とはいうものの、意匠だけが新しい、本質は、「売春」である。出演俳優も、名前の知られていない人々ばかりで、「ドキュメンタリー性」を狙ったのでしょうが、こういう作品に出るのは、名の売れた俳優なら、リスキーなことだろう。俳優にとっては、リスキーでも、作品は全然リスキーではないのも問題である。

 ドキュメンタリータッチではあるが、それは、ほんとうに「タッチ」にすぎず、そこには、作者の感情が、フィクショナルな作品より露呈している。ソダーバーグが、なぜ、こういう手法に拘るのかは、今となってはわからない。「プロの」映画評論家は、褒めざるを得ないんでしょうが、こういう作品をほんとうに面白いと「思わざるを得ない」方々はお気の毒である(合掌)。

 「今更」、こういうものを、「リアルなドキュメンタリータッチ」で見せられても、観客はしらける。
 ただ、「高級エスコート」を買う、クライアントたちの風俗はそれなりにおもしろかった。

 主演女優は、「ほんものの」(笑)ポルノ女優だということだけど、化粧は濃いものの、丸顔の童顔で清純な顔立ち、スリムできれいな体形は、やはりポルノに向いているのか? 普通の女優になれなかったのか? なぜポルノ女優なのか? 興味のあるところである。そういうのをテーマにすればよかったのでは?

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「けふのお写真」は、「わん太の海(伊良湖のミニ海水浴場 2010.8)