山下晴代の「積ん読亭日常」

まっとうな本を読んでいく。

『さらば、愛の言葉よ』──さらば、ゴダール(★★★+★)

『さらば、愛の言葉よ』(ジャン=リュック・ゴダール監督、2014年、原題『ADIEU AU LANGAGE』、69分)

ずっと「女」と「男」なのである。ずっと「路上」なのである。ずっと「さまよっている」のである。そして、背景は、ずっと「工場」(今回は「ガス工場」)なのである。ずっと「労働者」であり、ずっと「赤」すなわち、「共産党員」なのである。ただし、中国共産党幹部たちのほとんどは、マルクスなど全然読んでないそうである。
 「そこへ」、3Dである。『アバター』より有意義そうな3Dであるが、私が見たのは、2Dでしか上映しない映画館だった。水の中を木の葉が流れていくシーンが美しい。あんなにも混じりっけなしに、水とその浮遊物を撮れる監督はほかにいないだろう。そして、画面は、常に、「斜め」になっている。iPhoneの画面に映された、なんとかいう哲学者(?)の画面が水色で美しい。こんなにも、「スマホ」の画面を美しく撮れる監督はほかにいないだろう。毎度の夥しい引用の数々。こんなにも教養のある監督はほかにいないだろう。そして、わんこ。パルム・ドッグ賞を取ったとかいう、ゴダールとパートナーの愛犬、ロクシー(♂)は、自然な演技。しかし、うちのわんこ、わん太の方が、もっとうまく演じられるだろう(笑)。
 相変わらず意欲的なゴダール。「常に処女作を作る」と公言しているそうである。ああそうですか。自分は90分の作家と言っていたゴダールであるが、さすがに今回、90分を大きく切る、69分。まあ、こんな映画は短いにこしたことはないけど(笑)。あえて、今回、「アデュー、ゴダール(Adieu Godard)」と言っておこう。星一つは、餞別(笑)。