山下晴代の「積ん読亭日常」

まっとうな本を読んでいく。

『去年マリエンバードで』──本作を見ずしてレネを語るなかれ!(★★★★★)

(何十年も前、東京のどこかの映画館。岩波ホールあたりか……。最近、ブログ友との間で、レネが話題になったのと、「最終作」(?)が、あまりに俗っぽいので(笑)、急遽レビュー)

『去年マリエンバードで』(アラン・レネ監督、1960年、原題『L' ANNEE DERNIERE A MARIENBAD/L' ANNO SCORSO A MARIENBAD/LAST YEAR AT MARIENBAD/LAST YEAR IN MARIENBAD』)

 なんといっても、アラン・レネの原点であり、頂点である。アンチロマンの作家、アラン・ロブ・グリエ脚本。「アンチ」という言葉が意味を持っていた時代の映画。華麗なる記憶の迷宮。繰り返されるセリフ。微妙に異なる幾何学的な庭園。ミュンヘンのいくつかの城でロケされたという。デルフィーヌ・セーリグの前衛的な髪型。姦通のハナシかもしれないが、物語は直線的に語られない。四本の異なる脚本が用意され、ある規則によって繋げられた「完璧な」作品。何十年も前に、私が見た時も、すでに「リバイバル」だった。しかし、映像は今でも頭の中に鮮明に残っている。いま、こんな映画を作り出すことは非常に難しい。その後、官能のイマージュは、『ヒロシマ・モナムール』へと繋げられたが、もはや、そこには、「俗」が忍び込んでいた──。

 本作こそ、Deleuzeの、『L'image-mouvement』『L'image-temps』に拮抗しうる作品である。

(写真は、ヴェルサイユ宮殿です(笑))。