山下晴代の「積ん読亭日常」

まっとうな本を読んでいく。

『カメラを止めるな! 』──よろしく、です。(★★★★★)(ネタバレ注意!)

カメラを止めるな!』( 監督上田慎一郎、2018年)

 連日満席の大評判映画で、Yahoo!レビューの解説を読んだかぎりでは、どこがおもしろいかわからない。1999年(もう、そんなにもなるのか!)の、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』のような作品なのかな~と思って観に行くと、天井の高い倉庫のようなところで、すでに「ゾンビ化」した撮影クルーが暴れまわり、スタイルは見るに耐えるが、対して魅力的とも思えない若い女優が、きゃーきゃーわめいている。オバサン風の女が大活躍するも、やがて彼女も斧で頭を叩き割られ……。それが結構な長さがあるので、なーんだ、この程度か、と思っていると、わりあい軽めの音楽とともにタイトル・クレジットが出始める。え? 今からはじまり? これまでのチャチな騒ぎはプロローグ?

 「一ヶ月前」の文字が出て……。その映画がなぜ撮られたのかのエピソードとなる。サエない映画監督がいて、「テレビの企画」が持ち込まれる。そのテレビ局が、「あるある」の感じを漂わせる関西風あざといテレビ局で、「ワンカットのゾンビフィルムを作りたい」という。よく覚えていないが、映画作品とはいってなかったような気がする。最近のテレビによくある、タレント見世物、いたぶりドキュメンタリーと見た。その監督が、テレビ局の要望を入れて脚本を書いた。題して『One cut of the dead』だったかな~。その脚本をもとに、というか、ダシに、メーキングが作られる。ここがポイントである。本作は、メーキングのメタ・メタ……フィルムなのである。そこんとこを実にうまく作ってある。脚本も監督も編集もよいのである。もともと映画教室(学校ではなく(笑))の無名のスタッフが使われているが、映画作りがよくわかるようにもなっている。そしてそんな映画なのに、キャラがたっている!のである。とくに、テレビ局のプロデューサーのオバチャン、監督の映画キチガイの娘、元女優の監督の妻……、ほかに、普通の映画制作なら、いないも同然のような裏方が、「表舞台」に出て行く過程もすばらしい。イージーなテレビ界、権威主義的な映画界を、逆手にとって嗤いまくる転回が「してやったり!」である。
 くわえて、低予算当然の環境をもモノともしない、カジュアル感も今ふうで、ものたりなさを感じさせない。