山下晴代の「積ん読亭日常」

まっとうな本を読んでいく。

『バトル・オブ・ザ・セクシーズ 』──ひさびさスポーツ根性モノ(★★★★★)

 
 ウーマンリブ盛んな1970年代、女子テニスプレーヤーが男のプレイヤーと試合するという物語。カメレオン俳優のスティーブ・カレルがどこまでやるかが見ものであった。ギャンブル中毒から立ち直れないまま、そのギャンブル癖の延長のようにウーマンリブに逆らって、男性優位を示すために女子との試合を提案する55歳のオッサン・プレーヤー。べつに女を見下しているわけでもなく、まあ、追いつめられてのスタンドプレーなのだろう。経歴もなかなかの有名プレーヤーである。
 かたや売られたケンカを買う、ビリー・ジーン・キング。こちらが主役で伝説の人。これを、エマ・ストーンが演じるのだが、もともとアスリート体質のエマにはもってこいの役だった。試合のシーンは、ほんものの中継のようにカメラが固定されたままコートを写している。そこを、カレルとエマが動く。エマの表情は本気である。一方、はじめは「からかい」も入っていたカレルも、ポイントを取られていくと、表情もだんだん本気になってくる。このあたりの変化が面白い。うまい。
 私生活のなにやかやも描かれてはいるが、これはスポーツ根性モノと見た。
 よく考えてみれば、負けるはずのないエマである。試合前、オッサンは、ビタミン剤とかサプリなどを、「専門家」に処方してもらい、うだうだ過ごし、エマはなりをひそめつつ、自己鍛錬に励む。そして勝ったあと、ひとりになって泣く。ここがいい。体の大きさとか筋肉の量などの差は問題ではない。要はガッツである。女は勝てる!