山下晴代の「積ん読亭日常」

まっとうな本を読んでいく。

紙よりもっと薄いもの

 渋谷の歯科医師宅の3階で、黒ビニール袋に入った、その家の娘さんのバラバラ死体が発見されたという事件は、その家の次男、つまり、その若い女性の兄が犯人であることがわかったと、ネットのニュースは流していた。また、mixi内では、その女性の、mixi内での名前や、mixi外のブログをリンクしている人がいた。それで、なんとなく、被害者と、そのリンクしている人がいう、女性のブログを見にいった。自分の写真を何枚も載せていて、見たところ、育ちのよさそうな、かわいらしい女の子である。しかし、20才にしては、書いている内容が幼稚で、小学生が、長男ばかりかわいがる両親に不満を持っているような書きっぷりである。美しい家の中や、お菓子の載った食器や、ペットの猫の写真なんかが載っていたが、家庭の匂いは感じられない。この若い女性は、家庭の愛に飢えているようであった。それが、決定的なトラウマになっているようにも見受けられた。
 一方、mixi内を、1人の人からその友だちの人へと、サイトを見回っていると、しばしば、若い女性が、胸や脚などを露出させて強調したり、いわゆる、プロのモデルがしているようなポーズの写真に出くわす。しかし、これらの若い女性たちは、ほとんど素人で、それを、べつに悪いことだと思っているわけではないようだ。もちろん、悪いことではない。しばし、若いということは、平気でそのようなことをやらせる。私がHPを持った時分の、十年近く前にも、そういう若い女性のHPはあって、若い女が持つ、性的魅力を売り物にしていた。今回の殺人事件の被害者と「言われている」女性がそういうポーズをしていたわけではないが、その女性のmixi内での、「マイ・ミクシー」(いわゆる「友だちの輪」)には、そういう女性たちがたくさん集まっていた。というか、彼女からのリンクを辿るうち、そういう女性たちのHPへと行ってしまった。実物はどうか知らないが(ヒトのことを言えたものではないが(笑))、彼女たちが、おのれの「ポートレート」として掲げている写真は、確かに美しい。若い美しさに輝いている。しかし、その横には、幼い内面を晒す文章がくっついている。このコたちの誰かが、明日殺されていてもおかしくはない。そのような危うさと儚さがある。よく、正常と異常は紙一重と言われるが、実際は、その間隙(があるとして)は、紙よりもはるかに薄いものであると思われる。もしかして、その間には、「すきま」などなく、ただただ地続きの何かが連続しているだけかもしれない。
 彼女たちを見ていると、最も危険なものは、無自覚であると思わされる。