山下晴代の「積ん読亭日常」

まっとうな本を読んでいく。

『ジャージー・ボーイズ』──完全私淑(笑)!(★★★★★)

ジャージー・ボーイズ 』(クリント・イーストウッド監督、2014年、原題『JERSEY BOYS』

 ブロードウェイで何年もロングランを続けていたミュージカルなので、いつかは観たいと思っていたが、それをイーストウッドが映画化したとあっては、なにを差し置いても観なければならないと思った。これまでのイーストウッド作品から考えれば異色な感じもするが、音楽に造詣が深く、音楽のセンスもいいイーストウッドなので、見終わって、映画化に、このミュージカルを選んだのも当然のような気がした。
 それにしても、ほかの老監督と違って、老いてますます、センスが冴え渡っているのには感心した。演出がとてもうまい。物語の語りに天性を感じる。彼は、ひとつの映画を素早く撮ってしまう(1テイク主義)のでも有名だが、そのあたりの軽さが、ウッディ・アレンと似ている。
 希望のない街に生まれ育った4人の青年のサクセスと、その後の、「いろいろあらーな」の人生を、4人それぞれを狂言廻しに、うまくスイッチングしながら、クサイ部分を完全カットして語っていく。
 フットワーク軽いながら、歴史に残る名作。完全私淑(笑)。