山下晴代の「積ん読亭日常」

まっとうな本を読んでいく。

【詩】「蜜色のさよなら」

「蜜色のさよなら」

「詩人は通過していくところの痕跡を残すべきで、証拠はいらない。痕跡だけが夢見させる」(ルネ・シャール『庭の仲間たち』より)

痕跡……なにより弾痕
ハードボイルドは「桃色のさよなら」
カフカは「霧色のさよなら」
ミンガスも「霧色のさよなら」
二重スパイの小説は読み飽きて
いまは
Pを葬りことを考えているヤルタの夜明け
20世紀はこの地で作られた
ルーズベルトチャーチルスターリン
百韻を踏んだ土地
チェーホフの別荘のあった保養地
さよなら
なんて匂やかな言葉、そうあなたに贈るのは
蜜色のさよなら