プルースト論のためのノート
プルースト論のためのノート
「プルーストは呼んでいる」
「私は小説家なんだろうか?」──1908年の秋、プルーストはノートに書き付けている。彼は小説家になりたかった。しかし、怠惰、病、近親者の死、筆力のなさなどが障害となって、書き出せずにいた。死んだらもう書けないという想念が、1年後、突如として、『失われた時を求めて』の筆を執らせる。ものすごい速さで書き始め、1909年の秋には、『失われた時を求めて』「スワン家の方へ」の「コンブレー」の三分の二を書き上げていた。1908年には煮え切らない作家志望が、いかに、1年後には、真の作家どころか、20世紀を代表する作家となり得るか?
(folio版"Du cote de chez Swann」" Antoine Compagnon 序文より)