山下晴代の「積ん読亭日常」

まっとうな本を読んでいく。

『情報の強者 (新潮新書)』──ズレてるハイテク(?)老人(★)

『情報の強者 (新潮新書)』(伊藤洋一著、2016年2月16日刊、新潮社)

 著者のラジオ番組(日経)、「ラウンドアップ・ザ・ワールド・ナウ」を長い間(PodcastiPodでだが)聴いている。それなりに、世界のできごとをかいつまんで解説してくれて、役にたったような、気がしていた。しかし、今は、なくなった、「オススメ本」のコーナーで、「新潮新書」について語る率が、3冊に1冊ほどのわりあいで、またかと思われるほど多かった。それもそのはず、ツテがあって、寄贈本ばかり紹介していたのだろう。そんなことを聴衆が気づかないとでも思っていたのか。
 氏の話を、「じっくり」聴いている」と、「憲法改正賛成」「アベノミクスを実態のあるものとして信じている」のがわかった。
 本書に書かれているような「ワザ」は、たびたびラジオでも言及している。著者のように、新製品を誰よりも早く使い、金を惜しまない、それが仕事になっているような職業の人ならともなく、普通の「まっとうな」ビジネスマンには応用できないし、「情報収集術」としても、大ズレである(笑)。まあ、「情報収集術」は、もとスパイの、佐藤優氏にお任せした方がいいだろう。最も、引き合いに出したら、佐藤氏に失礼かもしれない。どーでもいいが、このジーサン、65にもなって、情報バブルの20年前のような行動を、30代のような元気さ(老人問題でも、他人事にように語っている(笑))で、いったいいつまでやっていくのだろう?
 一見役に立ちそうな、自信を持った氏の「情報」であるが、エマニュエル・トッドのようなまっとうな学者の分析を出している文春新書などに比べて、本作りが甚だしくイージーで恥ずかしい。
 ちなみに、私も20年前より、自前でWebを作っているが、氏が自慢げに言っていることは、20年前の入門書には書いてあった(笑)。今は、Adobeの、Cloudソフト、Dreamweaverで制作してます。
 まあ、せいぜい、皇居の周囲を走りながら、iWatchだかなんだかで、原稿でも書いてください(爆)。また新潮社のレベルと信用を下げてしまった本であることは間違いない。