山下晴代の「積ん読亭日常」

まっとうな本を読んでいく。

『前に進むための読書論 東大首席弁護士の本棚 (光文社新書) 』──ほとんど通俗エンタだが、努力だけは学べる(★★★)

『前に進むための読書論 東大首席弁護士の本棚 (光文社新書) 』(山口真由著、2016年7月、光文社刊)

「中卒」売り、無頼派作家、西村賢太氏とは、まさに、対極にあるような人である。恵まれた出自を生かし、どんどんキャリアアップして、今は、ハーバード・ロースクールに留学中だそうである。
 こういうふうに、頭もよくキャリアも申し分ない人というのは、仕事以外の読書でも、見栄を張る必要がないので、「小難しい本はいっさい読まない」、プライベートの読書とは、氏にとって、純粋な楽しみである。よって、幼少時から、父母の本棚から失敬した本などを中心に、ほとんどが、通俗エンターテインメントですが、さすが「東大首席」「元財務相勤務(約2年)」「弁護士登録(おもに企業関係)」のキャリアをお持ちの著者なので、読み方はハンパではない。どんな本でも、ここまで詳細に読めば、それは血なり肉になるでしょうよ。
 しかし、この読書指南書、いったどんな読者を想定しているのでしょう? 私は氏の勉強法に関心があったので、ほかの著書と同じように即買いしてしまいましたが。ためになったことは、やはり、それなりの分野でイッチョウマエになるためには、孤独でなければならず、それとどのようにつきあうかが問題。
 「読書会や勉強会には、なんの意味も見いだせません」。同感。
 だが、しかし、少しでも何かをクリエイトしようと思っている人には向かない。この人自身、次々「試験を突破」はいいけど、さてその先どうするのか? いかなる思想を持っているのかは、まったく見えてこない。自民党から立候補か? すでにお誘いはあったかも。だが、そのへんの元タレントでも国会議員になれるので、案外、その道には興味ないかも。
 「ハウツウ本は書いているけど、読まない」。自分の店の商品は食べない、どこかの食品会社の社長がいたような……(笑)。まあ、それはそれとして、毎度、努力だけは学べる。

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