山下晴代の「積ん読亭日常」

まっとうな本を読んでいく。

#本書籍

【本】『読書実録』──テクストの喜びゼロ(★)

『読書実録』(保坂和志 著、2019/9/26、河出書房新社 ) たとえば、カフカの日記は、普通ならこぼれてしまうような行間を拾って、どこまでも興味は尽きないが、保坂和志も、カフカに習っているようだが、結果はまったく見当違いとなって失望させられた経験…

【本】『フーコー入門 (ちくま新書)』──フーコーのテクストとはなんの関係もない(★)

『フーコー入門 (ちくま新書)』(中山元著、1996/6/1刊、筑摩書房 ) フーコーの「処女作」は、精神科医ビンズワンガーの翻訳及び、著書の、本文より長い序文である。カントの人間学から、文献学へと進んでいったフーコーは、なにより、ドイツ語に通じる哲学…

【Amazonレビュー】『プログラミング入門講座――基本と思考法と重要事項がきちんと学べる授業 』(米田 昌悟 (著)、SBクリエイティブ刊)──プログラミングを「学ぶ方法」の「紹介だけ」(★)

『プログラミング入門講座――基本と思考法と重要事項がきちんと学べる授業』(米田 昌悟 (著)、 2016年9月28日 SBクリエイティブ刊) 「この本を読んだだけでは、プログラミングは学べません。実際にアプリケーションなりを動かすことによって学ぶことができ…

【Amazonレビュー再掲】『アベノミクス批判――四本の矢を折る』 ──極右政治家(海外メディアはそう書いている)安倍晋三分析(★★★★★)

『批判――四本の矢を折る』(伊東 光晴 著、2014年12月14日、岩波書店刊) 伊東光晴は、『ケインズ』(岩波新書)の翻訳もあり、長きにわたる雑誌『世界』の論客であるが、それより、「岩波文化を代表する」などと形容されることもあるようだ。「岩波文化の凋…

『現代詩手帖2019年6月号』──読むところがない(笑)(★)

毎年年末は、アンケートと「住所禄」の号であったが、それを、年度の半ばでやってしまっているとは、よほどネタがないのだろう。ネタなど、ふだん問題意識を持っていれば、いくらでも浮かぶものだが、この編集部は、いかにして、推定300人程度の「読者」(含…

ミシェル・フーコー『言葉と物ー人文科学の考古学』

ミシェル・フーコー『言葉と物ー人文科学の考古学』(渡辺一民・佐々木明訳、1974年、新潮社刊) Michel Foucault "Les mots et les choses"(1966, Edition Gallimard) 実は、『臨床医学の誕生』に、「言葉と物」は、重要なタームとして出てくる。というか…

『宝島』(真藤順丈著)──直木三十五が化けてでる(★)

『宝島』(真藤 順丈著、 2018年6月21日、講談社刊) 「高い、梢の落葉は、早朝の微風と、和やかな陽光とを、健康そうに喜んでいたが、鬱々とした大木、老樹の下陰は薄暗くて、密生した潅木と、雑草とが、未だ濡れていた」 これは、直木賞のその名の作家、直…

『ネットワークがよくわかる教科書』(福永 勇二 著、SBクリエイティブ、2018年9月21日刊)──20年前に誰もが知っていたことしか書いてない(★)

『ネットワークがよくわかる教科書』(福永 勇二 著、SBクリエイティブ、2018年9月21日刊) (自分で買ったのではなく、Amazonが、Vineメンバー(という制度があるんですが。どういう人に資格があるのかというと、レビュー順位が上位+たくさん購入している…

柄谷行人『定本 柄谷行人集〈4〉ネーションと美学』── 卒論レベル(★★★)

『定本 柄谷行人集〈4〉ネーションと美学』(柄谷行人著、2004年、5月27日、岩波書店刊) 2004年刊行の本書を今さらながらに開いたのは、「ネーション」に関して思うところがあったからである。それというのも、イタリア人「テロファイナンス専門エコノミス…

『前に進むための読書論 東大首席弁護士の本棚 (光文社新書) 』──ほとんど通俗エンタだが、努力だけは学べる(★★★)

『前に進むための読書論 東大首席弁護士の本棚 (光文社新書) 』(山口真由著、2016年7月、光文社刊) 「中卒」売り、無頼派作家、西村賢太氏とは、まさに、対極にあるような人である。恵まれた出自を生かし、どんどんキャリアアップして、今は、ハーバード・…

西村賢太著『一私小説書きの日乗 遥道の章』──断腸亭驚愕(笑)!(★)

『一私小説書きの日乗 遥道の章』(西村賢太著、2016年6月、KADOKAWA/角川書店刊) (Amazonに)二つのレビューがあがってますが、読んだところ、どうも、断腸亭センセイこと、永井荷風の、『断腸亭日乗』をご存じないようである。西村賢太氏のこのシリーズ…

『現代語訳 日本国憲法 (ちくま新書) 』──立憲主義に意味がある(★★★★★)

『現代語訳 日本国憲法 (ちくま新書) 』(伊藤真翻訳、解説、2014年1月、筑摩書房刊) 法曹界に多くの人材を送り込んでいる「伊藤塾」の塾長で、自らも弁護士資格を持つ本書の著者、伊藤真氏は、「集団的自衛権」問題の時だったか、国会で見解を述べておられ…

保坂和志「彫られた文字」(文學界2016年7月号)──目ざす方向には好感がもてるが成功しているとは言えない(★★★)

保坂和志「彫られた文字」(文學界2016年7月号、文藝春秋) 「目玉」であるらしい柄谷行人には関心なくて、「18歳の君が投票するとき考えて欲しいこと」という各界有名人へのアンケートにも関心なく、かつ、こんな文芸誌を、新選挙人の若者たちが読むだろう…

『2週間で人生を取り戻す! 勝間式汚部屋脱出プログラム』──勝間氏の性格が如実に出た本(★★★)

『2週間で人生を取り戻す! 勝間式汚部屋脱出プログラム』(勝間和代著、2016年4月、文藝春秋社刊) このテの本は、もうピークを過ぎた感があり、パクり合いが激しい(笑)。かつては、近藤典子氏などの、とにかくあるものをなんでも「収納」であったものが、…

『戦略がすべて 』──本書じたいが、コモディティ化(著者の使用法で、「汎用品化」)(笑)(★)

『戦略がすべて』(瀧本哲史著、2015年12月刊、新潮新書) タイトルに偽りありということは、レビュアーの多くの方々が書かれている。まさにそのとおりである。普通、こういうタイトルからは、なにか、これから生きる上で、あるいは、自分の仕事上で、戦略の…

『物理学者が解き明かす重大事件の真相』──ひとつの視点を提示することに意味がある

『物理学者が解き明かす重大事件の真相』(下條竜夫著、2016年1月、ビジネス社刊) どのようなものでも、科学は方法論にしかすぎず、「真実」を証明するものではない。ある考え方を提示するものとして意味がある。その点本書の第1章(おそらくこれが、白眉…

【サバイバル】のために

熊本ではまだ、ひどい地震が続き、16日未明の、当地(福岡)でも、かなり揺れを感じた(震度5)、熊本では震度6にあたった、その地震が「本震」だと、気象庁は発表した。それで、ただならぬものを感じ、以下の本を、緊急読んでみた。 ***** 【サバイ…

『つくおき』(nozomi著、2015年10月、光文社刊)

『つくおき』(nozomi著、2015年10月、光文社刊) 「つくおき」の目的は、時間の節約のためだろうと思われるが、週末の「まとまった」数時間を、一週間ぶんだかの、料理を作るためにとっているのは、まったくもって本末転倒である。これが、ほんとうに合理的…

川上未映子『あこがれ』──まるで「ぬりえ」のような害のない世界(★★★)

『あこがれ』(川上未映子著、2015年10月、新潮社刊) 本書は、二章からなるが、この二章は、それぞれ、『新潮』に一篇ずつ発表された。第一章「ミス・アイスサンドイッチ」の冒頭数ページは出色のできで、それは、少年(小学四年?)が「話者」であるが、言…

『困難な成熟』── 青少年よ! 成熟とは、本書を投げ打つことから始まる!(★★)

(『困難な成熟』(内田樹著、2015年9月、「夜間飛行」刊) いくら生きるのが苦しくても、こういう本のなかに回答や解決があると思ってはいけない。著者はいまは、「それなりに」売れている著作家で、あなたがたのような無知で、貧しく、「未成熟な」青少年…

原作『決定版 日本のいちばん長い日』──右傾化を助長する危険な本(★★)

(映画ではなく、原作の方であります) 『決定版 日本のいちばん長い日』(半藤一利著、文春文庫、2006年刊) 本書は、昭和40年(1965年)に刊行されたが、当時は、大宅壮一「編」となっていた。「編」であるかぎりは、フィクションではなく、氏が書いたので…

『このミステリーがひどい! 』──ある種の作品に関しては同感

『このミステリーがひどい!』(小谷野敦著、飛鳥新社、2015年7月30日刊) まあ、次から次へと御著書をお出しの小谷野氏であるが、世界史を書こうが日本史を書こうが、「春樹」を書こうが「ミステリー」を書こうが、みんないっしょ。どこを切っても「私小説…

『新潮 2015年 08 月号』 ──「祝 原田宗典復活!」(★★★★)

『新潮 2015年 08 月号』(新潮社、2015年7月刊) 今どき文芸誌を金出して買うなどというのは、よほど奇特な人だと思う。なのに、今号、本誌を買ってしまったのは、ひとえに、「あの」原田宗典(250枚一挙掲載)があったからである。「あの」というのは、や…