山下晴代の「積ん読亭日常」

まっとうな本を読んでいく。

【詩】「鴨」

「鴨」

鴨は草のなかにじっとして、
鴉のように嫌われ者を演じることもなく、
鷺のように目立とうとすることもなく、
ただここでは、誰も鴨など食べようとしないことに安堵しているようだった。亀のように、
鯉に食らいつくこともなく、水に浮かぶことにも飽きて、
平穏な時間を味わっているようだった。定めがたい空の色
その豊かさに満足して、愛を失った者も得た者も
そのそばを通りすぎてゆくのだが、その魂は
草の一本より小さく、けれど存在して、
あなたに語りかけている。


イメージ 1