山下晴代の「積ん読亭日常」

まっとうな本を読んでいく。

【詩】「2001年宇宙の旅」


ヨハン・シュトラウス2世が1867年に作曲した『美しき青きドナウ』の進行にそって、宇宙船がゆく。この曲を聴けば誰もがこの映画を思い出し、思い出せない人はご愁傷様。宇宙、未来。水飲み場を争って、「殺人」(?)まで犯してしまった「サル」は、大きな黒い直方体の物体であるモノリスに触れたときから、智恵がついて、食べ物だった獣の骨を武器に変えた。おのれの欲望を満たすには、邪魔者を消す、そして、消すためには、武器がいる──。そんな、あたりまえだと思っているイメージは、
スタンリー・キューブリックが、原作者、アーサー・C・クラークと、映画と小説「同時進行」で、映像化したのだ。この、
永久の映像化こそ
モノリスの内実だった。あれから、
18年……
われらはいまだ、モノリスを探してさまよっている。曲は、ヨハン・シュトラウスとは血縁関係のない、リヒャルト・シュトラウスが、1896年につくった交響詩『ツゥラトゥストラはかく語りき』。パンパン、パンパン。ティンパニが響く。人類の夜明け。放り投げた骨は記憶であった。
宇宙空間に浮かぶ記憶。
メモリ。それを失い
ふたたびサルとして
長い長い
類人猿期を
生きようとしている
われら
いまだ
2001年を
超えられず
2001年が
到来するのを
待つ。


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