2019-08-22 【詩】「はげ鷹」 文学 #詩 「はげ鷹」 吉田健一はたったひとつの地名でも 詩になると言った 私にとって遠州というのが詩である それはその名のとおり遠く 州であるその谷の砂地には いつでもはげ鷹の死骸があって 陽に照りつけられて匂う それは私にとって父性であり 父性とは最初に子に知を与えるものである ゆえに父は私に人生最初の歌を教えた まさに朝日に向かって歌いながら 「朝はどこから来るかしら? 光の国から来るかしら? それは明るい家庭から 朝は来る来る朝は来る」 ひとり川底を歩くとき やがては父になるその少年と その少年を送る私が重なる時 時間は金色に輝き はげ鷹の死を祝福する