山下晴代の「積ん読亭日常」

まっとうな本を読んでいく。

【訳詩】(サミュエル・ベケットがフランス語で書いた)「1 POEMES 1937-1939」より

【訳詩】(サミュエル・ベケットがフランス語で書いた)「1 POEMES 1937-1939」より


elles viennent
autres et pareilles
avec chacune c'est autre et c'est pareil
avec chacune l'absence d'amour est autre
avec chacune l'absence d'amour est pareille


彼女たちがやってくる
それぞれ違っていて似ている
それぞれにとっては違っていて似ている
それぞれにとって愛の不在は違っている
それぞれにとって愛の不在は似ている

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(ワタクシ的解釈)

ベケットは「無」に向かって突入していく。すでにして大文字も、句読点もない。ピカソの絵のように、三人(くらいの(笑))女たちがこちらに向かって歩いてきて、各人まったく違うな、しかし、同じでもあるナ、と感じている。その矛盾の共存を描いた作品……なのでは?

彼はこの作品を英訳にもしているが、やはりフランス語で書くことによって、その矛盾の美しさが表れるようにも思う。