山下晴代の「積ん読亭日常」

まっとうな本を読んでいく。

【詩】「死んでいくあなたへ」

「死んでいくあなたへ」

たぶん、あなたは、
死んでいく。十分に理解し合えたとはいえず、十分に楽しい時を過ごしたとはいえず、見つめあって微笑み合い、満足した数も記憶からは消え去り、ぬくもりさえも
伝わらず、声だけが
陰気な響きで、耳の奥に残っている
出会いさえも奇跡とは思えず、
さりげない
日常のすきまに
消えていく
そのように
あなたは死んで
私の前から
姿を消すのだろう
これほどの
悲しみを
いかなる表現で
刻めよう
はじめ
声だけがあり
それからWord(語)が作られ、それから
Letter(字)が作られた
その時間の流れのなかにただ
佇むことしかできない。


イメージ 1