山下晴代の「積ん読亭日常」

まっとうな本を読んでいく。

【詩】「すずき(鱸)」


「すずき(鱸)」

すずきでまず思い出すのは、平家物語である。

 平家かやうに繁盛せられけるも、熊野権現の御利生(ゴリシヤウ)と聞こえし。其故は、古へ清盛公、いまだ安芸守たりし時、伊勢の海より、船にて熊野へ参られけるに、おほきなる鱸の、船に踊り入りたるけるを、先達申けるは、「是は権現の御利生なり。

御利生とは、神仏の加護。

すずきよ、すずき、おまえは、スペイン北端の海で私を迎え、いろいろスパイスを振りかけられて焼かれ、いったい、どんな加護を与えてくれようとしたのか?

ギュンター・グラスは、ひらめより加護を与えられ、ノーベル賞を取った。しゃべるひらめだ。何か、人間以外の生き物がしゃべるというのは、よくあることで、ホメロスの馬、レーモン・クノーの馬、わが江戸時代には、しゃべる犬が現れたとの噂がたった。そして、ミスター江戸、いやエド

グラスはその後、ナチス問題に巻き込まれ、詳細は忘れたが、あまり尊敬されない作家となった。

平家は、周知のように、壇之浦に消えた。果たしてそこに、すずきはいた。浅瀬にいる汚いものを食べる魚だと、誰かが言った。

すずきよ、すずき、おまえは、令和という元号まで生き延び、誰にどんな加護、のち、滅亡、を与えようというのか?

すずきよ、黒い皮膚の、白い身の、そこそこうまい魚よ。



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