山下晴代の「積ん読亭日常」

まっとうな本を読んでいく。

【詩】「不可能」

「不可能」

ヴァレリーの十行詩 ababccdeed と脚韻を踏む『蛇の粗描』 ?bauche d'un serpent を日本語に訳すはいいが同様な韻を踏むことは不可能であるこの蛇は vip?re マムシである
十行詩とは十行の節が一連を形成している詩で、ababccdeed と韻を踏むヴァレリーの『蛇の粗描』は三十二連から成っている

*美しき蛇、青の中にひっくり返って、
ぼくは口笛を吹く、繊細に、
神の栄光に贈る
わが悲しみの喝采
ぼくには十分だ音楽の中
苦い果実の巨大な希望が
泥の息子たちを動転させるだけで
__きみを巨人にするこの乾き、
存在が奇妙を興奮させるまで
全能の無よ!*

『蛇の粗描』は上記のように結ばれる
空間はつかみどころがなく
三次元でも四次元でもない
悲しみの処遇として不可能に身をゆだね
わが遠州の蛇を懐かしむ


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*印は、Paul Val?ry "?bauche d'un serpent" 最終連拙訳。