山下晴代の「積ん読亭日常」

まっとうな本を読んでいく。

『オーガ(ニ)ズム 』 ──純文学長編は、プルーストで終わっている。

『オーガ(ニ)ズム』(阿部 和重 著、2019年9月26日、文藝春秋 刊)

 すぐに、トマス・ピンチョンを思わせる作りなれど、冒頭登場人物図を見ただけでうんざり。たしかに、著者はピンチョンの影響下にあるかもしれないが、それにしては、規模、筆力、などがいかにも日本的で、私などはむしろ谷崎を思い浮かべた。
 それにしても、純文学長編は、いまは書き手は、この著者しか思い当たらず、厳しい状況にある。というか、純文学長編は、実は、プルーストで終わっているのだ。20年も書けてこんなものを書くなんて、世界的状況は様変わりしている。今更、「オバマ」と言われても。プルーストは、第一次世界大戦的な世界状況のなかで、本作より長い作品を、もっと短期間に書き上げたと思う。こんなものを「読了して」喜ぶのは、ただひとり、渡部直巳だけだ(そのひと、だれ?(爆))。

 

オーガ(ニ)ズム

オーガ(ニ)ズム